5月は
風が気持ちよく通る季節です
外を歩いていると
ふとした瞬間に
草木や花の匂いが混じることがあります
風には目に見えない季節の気配を運ぶ
そんな力があるようです
昔の人が
そうした風の性質に
神の姿を重ねたのも
なんだかわかる気がします
アテネには
風の塔と呼ばれる
八角形の石造りの建物がありましてね
その八つの面には
それぞれ違う方角から吹く
風の神たちが彫られています
冷たい北風
雨の気配を含む風
春の花や若葉を運ぶ
やわらかな西風
同じ風でも
どこから来るかによって
運んでくるものが違う
風をただの空気の流れでなく
それぞれ違う性質として
みていたようです
そして
この塔の屋根の上には
青銅のトリトン像が立っていたそうですよ
こんな感じですかね
トリトンは
海神ポセイドンの息子です
海にゆかりのある神が
なぜ風を指し示していたのか
少し気になりませんか?
それは海と風は
切り離せないものだから
当時の航海にとって
風は命に関わるものです
船を進めるのも
波を荒らすのも
嵐の気配を運ぶのも
すべて
風
海を読むためには
まず風を読む必要があったんだと思います
また、トリトンは
法螺貝を吹く姿でも知られています
その音で
荒れた波を鎮める存在として
語られてきました
風によって波が立ち
音によって海が鎮まる
トリトンが風の塔の上で
空を指し示していた理由が
そこにあったのかもしれません
風の塔は
ただの美しい建物ではなく
時間を知り
空を読み
風の向きを知るための場所
屋根の上で回るトリトンは
今どの風が街を通っているのかを
人々に知らせ
見えない風に名前をつけ
姿を与え
その通り道まで見る
私には風は見えません
けれど
肌に触れ
草木を揺らし
香りを運び
空の気配が変わるのは感じる
5月の風には
春の名残と
初夏へ向かう軽さが
少し混じっています
SIESTAでは
5月はミントとラベンダーの香りで
お迎えしています
ミントは
先にすっと通っていく香り
ラベンダーは
そのあとに
少し静かに残る香り
強く香らせるというより
空気の中に
少しだけ季節が混じるように
部屋の中にも
小さな風の通り道をつくって
お待ちしております。